「四合院」の風水

    「四合院」は風水と密接な関係があります。風水は古代の建築環境学と言われるほど、学問として認知されています。実際のところ、風水の多くは科学的に実証されている現象で、過去にTV番組でも特集を組んだ事がありました。筆者は将来マイホームのレイアウト用に、一部参考したいと思っているので、なるほど~と思う部分は良くチェックしておきました。

正門(玄関)の位置
    正門は南向きになっているのは、日本の家相と同じですが、でもなぜ真ん中ではなく、東南方向に作っていると、疑問に思いませんか。ここは中国の風水で決まった位置なんですね~この風水盤を見た事はありますか。


    中国の建築風水のルールに「坎宅巽門」と言うのがあります。「坎」とは北の方向で、五行では「水」属性であり、敷地の北側に母屋を置くのは火災などの災いを避けられるとされています。「巽」とは東南方向を指し、五行では「風」属性であり、「出入平安」「順風満帆」と言う言葉の様に、出入りが順調で、金運に恵まれると信じられています。

    これは科学的にも説明があります。召使いなどがいる南棟には飯炊きの場所があり、釜土または外から火事が起こった場合、中庭を挟んで燃え移る事を防げるだけでなく、大陸の東北では北風の時期がトータルで長いので、母屋が北にあると、風で火種が運ばれる事なく、火消しが終わるまで母屋は大抵無事でいられます。

   そして、温かい爽やかな季節では東南風がそよぐので、昼間、正門の出入りが気持ち良く、安全安心に繋がります。

    これが、正門を東南方向に置く理由です。

目隠し門と壁の意味
    正門に入って、目の前には仕切られた空間があり、直線位置には目隠し壁があります。何故なら、昔から鬼は直進する事しかできないとされ、門から直進すると壁に当たり、そこで前進が止まり、災いを免れます。

    ここでの鬼を何を指すか調べましたが、特に納得行くような答えはなく、ちょっと気になったのは、一説によると冷え込んだ夜の突風や吹雪などに例えた考え方があります。門を開けた瞬間に中庭や住居に直撃する事を防いでいます。鬼が衝突しても壊れないほど、丈夫な壁です。上に画像があるので、見て下さい。

    日本の住宅にも玄関から真っすぐに部屋へ入れるのは少なく、大抵目の前には仕切りがあって、左折か右折してリビングに入ります。もし部屋まで直進できるような玄関なら、衝立か何かで直進方向に置くと、災いを減らす事ができます。

建物に見る装飾と図案
    基本的に格子図案がアレンジされ、それぞれ縁起の良い名前が付いています。例えば下記画像の左奥は「福壽雙全」、意味は幸運長寿共に持ち合わせていると言う意味です。



東北地方の平屋作りと南地方の2~3階建て
    日本同様、東北地方は一般的に人口が少ないが、土地面積が広いので、平屋作りでも、横方面に必要面積を広げる事ができます。中国もそのような理由で、東北地方は平屋作りが多く、南地方は2~3階建てが多い事になっています。

    以前、記事にした中国陝西省に発見された日本最古の「四合院」村は、東北地方に属しているものの、山間に位置し、谷原の面積により、北京と比較すれば狭い「四合院」の集まりですが、2階建ての住宅が殆どでした。


    しかし、上記村の「四合院」は、2階建てではありますが、人は1階で生活をし、2階は全て倉庫でした。ただ、風水では人の出入りと生活活動が少なければ少ないほど、墓場に近づくイメージがあり、2階を物置にすると、棺桶を頭上に担いでいるような、無意識のうちの圧迫と重圧がかかり、精神的に良く無いとされています。この点、「四合院」を調べている間に、関係する記述を見つける事はありませんでした。

    南地方の住宅も、年配の方や身体虚弱な方は1階で生活をしています。これは行動が不便だからと言う理由だけではない様です。風水で、住宅は平屋が良しとされているからです。実は、あまり広く知られてない事ですが、これにも科学的根拠がありました。

    中国明の時代の医学者である劉純は、医学著書に書いてある内容と関係があります。原文はこうです。「病家不接地气,故阴阳不通。是之阳气自行消长,而症候随之消长。嘱病家每日赤足走路,半时辰即可。」

    大体の意味はこうです。病が多い家は地についていない為、気が通りません。陽の気が溜まり続け、不調の症状となって現れます。病の多い家の人に言いたいのは、毎日30分ほどでも良いので、裸足で地面を歩いて下さい。

    「気」とは何か、古代では科学技術が追い付かないので、「気」と表現していますが、現代科学で発見した、人体に流れる微弱電流の事ではないかと言う説があります。人体は頭から足まで、微弱電流が流れている事はわかりましたが、微弱電流の源はまだはっきりしません。昔の人は陰陽で表現し、その微弱電流が大地や樹木など、自然と接触する事で流れが整えられると言われます。

    近年、滝の側で発生したマイナスイオンが人体に良い事は既に周知されましたが、何故いいのかと言うと、空気中や人体のプラスイオンを連れ去るからです。プラスイオンを知らなかった古代は、それを陽の気として認識していた事でしょう。

    静電気体質の人がいますね、溜まった静電気が一気に放出する時にビリっと来るので、すごく嫌な思いをします。筆者も静電気体質です。嫌ですが、放出できると言う事はまだ良い事と言えるので、溜まった静電気を放出できない人は病になり易いと思います。静電気体質で静電気を嫌う人、なんだかわからないけど調子が悪しと思う人、ぜひ1階で生活し、または毎日自然と触れ、或いは定期的に裸足で外を歩いて、人間アースになって、体内の気の流れを整えてみて下さい。

中庭の禁忌
●桑の樹を植えてはならない、同音の「喪」で縁起が悪い
●柳の樹を植えてはならない、同音の「流」で幸運が流れてしまう
●梨の樹を植えてはならない、同音の「離」で離散を危惧される
●槐(エンジュ)の樹を植えてはならない、同音の「壊」で破滅へ向かう

    と言うのがあるそうです。この辺は中国語だけの発音にしか通じないから、科学的な根拠は何もありません。敢えて言うなら、それは言霊に縛られると言う事くらいでしょうか。

●中庭は外(街)の地面より高く作ってはならない、水を吸収する様に、財産を流出させません。

    と言うのもあります。財産まで及ぶかどうかはわかりませんが、科学的な理由を探すとすれば、雨水などを流れ込ませ、果樹や菜園を潤い、収穫に繋ぐと言う意味になると思います。日本は海に囲まれてあまり実感はないと思いますが、中国大陸は水が非常に貴重であり、たびたび旱魃等に見舞われるので、このような思考になったのでしょう。

中庭を囲む構造の意味
    四角い構造になると、中から見る角はほぼ凹型になります。風水的に角が凹型は良しとするが、凸型は健康を害したり、災難が訪れるとされています。日本でも柱が出っ張り角が凸になると、カーテンで隠すか観葉植物を置くか、対策をすると言うのは風水からの理由です。